皆さんこんにちは。東大セミナーの篠原です。
今月のおススメ本は「母という呪縛 娘という牢獄」です。
著者:齊藤 彩
出版社: 講談社
価格(税込):1980円
最近、フジテレビのニュース番組「Mr.サンデー」で2018年の「滋賀医科大学生母親殺害事件」が取り上げられました。この事件は、30代の女性看護学生が母親を殺害し、遺体を解体して遺棄したという凄惨なものでした。番組では、加害者である髙崎あかり(仮名)の幼少期の生活や教育虐待の様子が映像で再現されました。
「母という呪縛 娘という牢獄」は、この事件の加害者と著者との間で交わされた手紙を基にしており、あかりが犯行に至った経緯や事件の詳細、裁判を通じての心境の変化を記した本です。
最近、教育虐待の問題がしばしば報じられています。教育虐待とは、教育熱心過ぎる親や教師などが過度な期待を子どもに押し付け、思うような結果が出ないと厳しく叱責することを指します。
この事件の犯行動機は、あかりが母親から長年にわたって受けた教育虐待にあります。小学生の頃から、あかりは母親に高成績であることを強く求められ、国立大学医学部への進学を目指して9年も浪人させられました。成果が出ない場合には、薬缶のお湯をかけたり、鉄パイプで殴打したりと、長年にわたる壮絶な虐待が繰り返されていました。
本書で最も印象に残ったのは、加害者が犯行を認める決意に至った心境の変化です。一審では母親の殺害を否認していた加害者は、控訴審で一転して犯行を認めました。教育虐待を受け続けたことが原因で、加害者は長年にわたり、母親を含め他人を信頼することができなかったのです。しかし、裁判を通じて事件の詳細が明らかになり、裁判官や裁判員によって長年の苦悩が理解され、加害者が殺人の罪を犯しても尚支援してくれる実父の存在を再認識することができたことで、加害者は心境の変化に至ったのです。
本書のレビューには、加害者に同情する声や、「自分も教育虐待を受けた」という声が多くありました。勉強について親から過度に干渉され、厳しく叱責されたことが、子どもたちにとって深刻なトラウマとなっていることは明らかです。たとえ事件に至らなくても、子どもたちは、自分の本心を親に打ち明けることができず、周囲に不信感を抱き、孤独を感じることがあります。親自身の孤独感や自己否定感が、過度な期待や厳しい叱責の原因になることがあるため、社会全体が親と子どもをサポートする環境を整えることが重要であると考えます。
私たちは学習塾として、親の期待と子どもたちの想いを受け止め、バランスを保つことができる存在でありたいと考えています。勉強のみならず、子どもたちが安心して話せる場を提供し、自分らしく成長していくサポートをしたいと思います。
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