皆さんこんにちは。東大セミナーの篠原です。
今月のおススメ漫画は「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」です。
著者:押見 修造
出版社:太田出版
価格(税込):726円
以前、TBSのNEWS23という番組で吃音症の特集が行われていました。吃音症とは、言葉が詰まったり、同じ音を繰り返したりしてしまう言語障がいのことです。吃音症の人は100人に1人の割合でいますが、まだまだ理解が浸透しておらず、笑われたり、からかわれたり、理不尽に怒られたりして、生きづらさを感じる当事者が多くいます。
本書は、吃音症の主人公の高校生活が綴られた内容になっています。
私自身は吃音ではないのですが、人と話すことが得意ではなく、特に小学生時代は先生に授業中当てられたときや、人から話しかけられたとき以外は喋りませんでした。普通の小学生であれば休み時間や登下校中に友達と話をするものですが、私は他の人と同じような振る舞いができておらず、小学生なりに「自分はどこかおかしいのではないか」「もっと喋った方が良いのでは……」と悩んでいたことがありました。
漫画には、主人公が上手く自己紹介できなくてクラスの人に笑われてしまう場面や、話したいのに声が出ない場面が出てきます。私自身も上手く人と話せない経験があったせいか、主人公の「何が原因はわからないけど話したいのに上手く話せない」という悩みにとても共感できるものがありました。
作者の押見修造さんも吃音症で、ご自身の経験をもとにこの漫画を制作されました。しかし、この漫画には一切「吃音」「どもり」といったキーワードは出てきません。それには、「ただの吃音漫画にはしたくなかったから」という作者の想いがあります。
言われてみれば、人それぞれ抱えるコンプレックスは、吃音だけに限られたものではありません。作中には歌が上手く歌えず笑われたり、空気が読めず友達を怒らせてしまうクラスメイトが登場します。現実の世界にも、自分の体型や容姿、能力、学歴などにコンプレックスを抱えて悩んでいる人はたくさんいるものです。
本書の最後には、主人公が「上手く話すことができない自分」をありのまま受け入れるシーンがあります。次のような台詞がありました。
私をバカにしてるのは
私を笑ってるのは
私を恥ずかしいと思っているのは
全部私だから
全てのコンプレックスを抱えている人に当てはまる言葉ではないでしょうか。コンプレックスとは、自分自身が持っている偏見の矛先が、自分自身に向いている状態と言えるのかもしれません。本書を通じて、吃音症に関する理解を深められるだけではなく、自分のコンプレックスとの向き合い方にも気づきをもたらすと思います。
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