先日、車の中で稲盛和夫さんの講演CDを聴いた。運転中に何回かに分けて聴いたのであるが、いたく考えさせられた。内容は大まかに人生を振り返りながら、これまでに出会った人たちに感謝するもので、何人かの恩人の名を挙げながら具体的に語られたものだった。各人に共通するのは、「この中の誰一人としてその人との出会いがなければ今日の自分はない」との思いである。例えば稲盛さんは2度中学受験に失敗していること、そして幼いころ結核にかかり充分な勉強ができなかったこと、戦後の経済状態で7人兄弟の2番目として早くから働き手として期待され、進学は考えられなかったことなどである。
そういった境遇の中で熱心な学校の先生が稲盛家に日参して、進学するようにご両親に説得してくれたとのことである。大学進学においても事情は同じで、やはり熱心な先生が大学に進むように強くご両親に働きかけられた。それにしても、この2人の先生の熱誠には心うたれる。教え子のために懸命にご両親を説得される姿を想像するだけで胸が熱くなる。戦後、日本は未曾有の経済発展を遂げ、奇跡の復興と世界から賞賛されたが人材育成において、このような先生方の努力があったにちがいない。稲盛さんは大学は鹿児島大学を出られているが第1志望校ではなかった。
やっと就職した会社も初任給から遅配となるボロ会社で間もなく意見の対立もあり辞められた。これが今をときめく名経営者といわれる稲盛和夫さんの半生である。「人間万事、塞翁が馬」という言葉があるが、人生の機微に触れた思いがする。決して順風満帆ということではない前半生があってこそあれだけのことが成し遂げられる人物になったのではないか。それに大業をなしても決しておごらず、今日まで出会った人々に感謝する心を失わない。現在、稲盛さんの主催する経営者の勉強会である盛和塾に9千人の会員が在籍していると聞く。稲盛さんまでに至らなくも、人との出会いに感謝する心を大切にしたい。
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