2008年は「源氏物語」千年紀にあたる。書店でふと手にした板野博行著『「源氏物語」に学ぶ女性の気品』読んだが、光源氏とかかわりのあった十六人の女性の特徴がダイジェストにまとめられていて大変おもしろかった。著者は東進衛星予備校で人気の国語の先生である。東セミグループでは二度お招きし公開講座を開催したことがある。講演のあと食事をしながら酒盃を重ねたが、なにしろ話題が豊富で時間の経つのも忘れるくらいであった。 その先生が著した書ということで特別に興味深く、内容の面白さもあって一気呵成に読み終えてしまった。それにしても紫式部はすごい。千年も前にあれだけの素晴らしい作品を著したのだから。十六人の女性はそれぞれ個性が際立ち、どんな女性も十六人のタイプのどちらかに分類できるのではないかと思うくらいである。また当時の婚姻の様子や宮中でのしきたり、恋愛などについても自然と理解でき興味深かった。 先日、哲学者の梅原猛氏と「国家の品格」がベストセラーになった数学者の藤原正彦氏の対談をテレビで観る機会があった。話題は多岐にわたったが、小学生における国語教育の重要性にふれ、古典に親しむことの必要性を強調されていた。古典として「源氏物語」「徒然草」「方丈記」「歎異抄」「風姿花伝」「奥の細道」などが挙げられていたが、学問をするうえで美的感性を磨くことが大切ということだ。このへんの話になると私のような凡人にはぴんとこないところもあるが、藤原氏の『私の尊敬する数学者の岡潔先生の「数学者には野に咲く一輪のすみれに感動する心が必要だ」という言葉があるが、全くそのとおりだと思う』の言に耳を傾けざるをえない。受験科目としての古典に取り組むというより、日本人として日本の素晴らしさ、美しさに気づかせてくれる古典を楽しむ心のゆとり、幅をもちたいものである。それにしても超難関大学を甘く見てはいけない。この境地に達した人物にこそ、その門戸は開かれるのである。
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