よく私たちは生徒面談などで「自分のために頑張れ」という激励を飛ばしがちだが果たしてどれだけの効果があるのだろうか?これについては近頃少し疑問に思っている。自分のために何かを為すということであれば、自分で諦めてしまえばそれで終わりである。人からとやかく言われる筋合いもない。むしろ愛する家族や他の信頼する人たち、困っている人など他の人のために頑張る方がより力が出るのではないだろうか。表題の「人のために努力する」はどこか与える喜びに繋がり、人を強く動機づける。
一時、「自己実現」ということが教育界でよく言われた。マズローの欲求5段階説の最高位に「自己実現」の欲求が挙げられそれを達成することが人間として最高の幸せであるというものである。 確かに自己について重要感を持ち、自分らしさを発揮したいと願うことは素晴らしいことである。
しかし、それはあくまで人と人との関係性のなかで活きるものである。話は飛ぶが明治以降の近代化の中で刻苦勉励して「故郷に錦を飾る」ことは、田舎から都会に出る学生の強い動機であり親孝行の一つの形であった。
ソチ・オリンピックで41歳の葛西選手の活躍(銀メダル)が世界中で話題となり感動を呼んだ。
彼は以前、ある雑誌の記事の中でメダルにかける思い、そして陰で支えてくれた母への思いを語っている。米も買えない、電話も引けないといった貧しい少年時代。それでも大好きなジャンプを続けられるのは母のお陰。苦労を掛けた母に金メダルを取って、家を建ててあげると約束し、厳しい練習を乗り越えてきた。そんなある日、実家が火事に遭い、母親が全身火傷を負い、手当の甲斐なく亡くなってしまう。
「今でも手紙を開くとポロポロと涙が出てくるんです。大事な大会の前にはこの手紙を読み返します。見るたびにものすごく大きな力をもらえるんです」という手紙にこう書かれていた。 「いまこの時を頑張れ。絶対お前は世界一になれる。おまえがどん底から這いあがってくるのを楽しみに待っているよ」。この手紙は痛みと死の恐怖に必死で闘いながら書かれたという。
*文中の葛西選手に関連する内容は致知出版社の小笠原節子さんの電子メールの文より引用しました。感謝致します。
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