皆さんこんにちは。東大セミナーの篠原です。
このページを見つけてくださった方は、「もっと効率的に試験や入試で出てくる用語を暗記できたらなぁ・・・」と思っていらっしゃることと思います。参考書や対策テキストで出てくる用語を覚えられたら、とても楽ですよね。では、その「記憶」というものは脳でどのようにして作られ、どこに蓄えられるのでしょうか?この記憶のメカニズムを理解して勉強に臨めば、効率よく勉強ができ、上達への近道となることだと思います。
今回は、“受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法“という本を紹介しながら、長期記憶のメカニズムや「記憶」そのものについて解説します。
目次
0.おすすめ本:受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法0.本の情報
タイトル:受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法
著書名:池谷 裕二
出版社: 新潮社
価格(税込):572円
記憶とは、脳科学的に言えば「脳内で新たな神経回路が形成されること」なのだそうです。ヒトの脳には、一説によると1000億個もの神経細胞があります。一つ一つの神経細胞が、別の神経細胞と神経線維を介してつながった状態のことを神経回路と呼びます。
例えるなら、神経細胞を「家」
神経線維は「道路」
神経回路は「都市」
ということができるでしょう。
そして、神経回路の中を「神経信号」が飛び回ることで脳が入力された情報を受け取り情報を保ち、必要に応じて呼び出すという、一連の記憶に関わる処理が行われるのです。
記憶には、短期記憶と長期記憶の2種類があります。短期記憶はその名の通り、脳の中に短期的に記憶しておく能力のことであり、情報を一時的に保管することです。対して、長期記憶は、情報を長期的に記憶することをいいます。パソコンで例えるならば、短期記憶がRAM、長期記憶がHDDといえるでしょう。
RAMとは、パソコンの中のデータを活用しパソコンにデータ保存するための領域、HDDとは、パソコンの中にたくさんのデータを保存しておくための領域です。
このように、記憶とパソコンの仕組みはよく似ているのです。加えて、短期記憶は長期記憶から情報を引き出したり、長期記憶に情報を保存する役割も持っています。つまり、短期記憶を介して長期記憶が形成される仕組みなのであり、短期記憶をいかに活用するかが長期記憶を効率よく増やすカギなのです。
短期記憶を長期記憶に変える、門番のような役割を持つ脳の部位があります。それが「海馬」です。
※「海馬」という言葉には「タツノオトシゴ」という意味があります。
海馬が長期記憶となるにふさわしいと判断した情報だけが長期記憶として保存されます。その長期記憶に保存される審査の基準は、「生きていくためにその情報が不可欠かどうか」です。例えば、「臭くなったものを食べたら食中毒を起こす」「石が頭に向かって飛んで来たら逃げないとケガする」というような、自分の命に関わる情報は海馬の審査に通りやすいということです。やはり人間といえども、元は野生の動物。厳しい自然の世界で生き延びるには、命に関わる情報を最優先で記憶する必要があり、その名残が海馬に残っているのでしょう。
学校の試験に必要な知識は大抵、「これを知らないと、死ぬ」というものではありません。けれども、現代人にとって試験は非常に重要なものです。どうすればこの「自分の生命には関わらないけれども覚えなくてはいけないこと」を、海馬に認めてもらい、長期記憶にすることができるのでしょうか?
ポイントは、「脳を上手くダマす」です。短期間の間に、同じ情報が何度も脳に入ると、海馬は「こんなに短期間のうちに何度も入ってくる情報なら必要なものに違いない!」と勘違いします。つまり、一定期間の間に何度も復習を繰り返すことで勉強した内容が長期記憶になるということです。
本書には、以下のような復習のプランが掲載されています。
学習した翌日に、1回目
その1週間後に、2回目
2回目の復習から2週間後に、3回目
3回目の復習から1カ月後に、4回目
また、「”一定期間の間に何度も繰り返す”というけど、”一定期間”ってどれぐらいの期間のことなの?」と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。短期記憶が保持されるのは、最大1カ月間だそうです。何か新しく覚えたいことがあったとしても、1カ月後に復習するとなるとほぼ思い出せなくなっており、新しく勉強し直すのとそんなに変わらないということになります。
カナダのウォータールー大学の研究結果によると、授業を受けたその次の日までに何も復習しなかった場合、学んだことの50%〜80%が失われるそうです。要するに、今日勉強したことも次の日にはほとんど忘れていだろうから、「その日の授業は次の日までに復習」は鉄則と言えるでしょう。この研究によれば、授業を受けた24時間以内に10分かけて復習、一週間後に5分程度復習、1カ月以内に2~4分復習すると、長期記憶になるようです。
上記のスパンを厳密に守って勉強計画を立てるのは難しい方も多いのではないでしょうか。そんなときは、自分のやりやすいように復習のタイミングと回数を決めるのが良いと思います。
学生であれば学校の授業を受けたその日に復習、週末日曜日を1週間の復習、テスト前に全範囲を復習するのです。かなりざっくりとした捉え方ですが、比較的記憶のメカニズムの理想形に則った復習のサイクルのように思います。その他、授業を受けた「その日、次の日、日曜日」に復習するというのも、語呂合わせで覚えやすく、実行しやすいのではないでしょうか。
さて、ここまでは短期記憶が長期記憶になるまでのメカニズムをご紹介しました。この「長期記憶」についてですが、「記憶」と一口にいっても実はさまざまな種類があることを皆さんご存知でしたか?記憶というと年号を暗記したり、用語を思い出すことができたりと、情報が頭の中にストックされているイメージがありますが、実はそれだけが「記憶」ではないのです。例えば、「自転車の乗り方を知っている」というのも「記憶」に該当します。先生が授業中に言っていたギャグを覚えているのも「記憶」、昨日の夕ご飯何を食べたのか覚えているのも「記憶」です。ここからは、長期記憶にどんな種類があるかをお伝えします。
知識として覚える記憶のこと。年号や用語、英単語、漢字、言葉の意味、数学の公式の暗記がこれに当たります。言葉を中心に構成された記憶です。繰り返し覚え直さないと忘れやすいという特徴があります。
実際に自分が行った経験と結び付けて覚える記憶のことを言います。1つ目の意味記憶よりも忘れにくい特徴があります。意味記憶は何度も繰り返さないと覚えられない記憶であることに対して、「エピソード記憶」は1回で覚えることもできます。授業中に先生が言っていたギャグは何故かいつまでも覚えている、ということはないでしょうか。ちなみに私の最も古いエピソード記憶は「赤ちゃんのときに、なみなみとミルクが入った哺乳瓶を落として割ってしまったこと」です。家族が驚いている様子にびっくりして記憶に焼き付けられているのでしょう。
いわゆる「身体に覚えこませる記憶」のことを「手続き記憶」と言います。これは「方法」を記憶することで、例えば自転車ののり方や、お箸の持ち方、バスケのシュートフォーム、野球のバットの降り方などが手続き記憶にあたります。手続き記憶が最も忘れにくいと言われています。昔、アイドルの方が「どうやって振り付けを覚えているのか?」という質問を受けて「身体で覚える」と答えていましたが、これはまさに「手続き記憶」ですね。
いかがでしょうか。記憶には、「知識として覚えるもの(意味記憶)」「経験として覚えるもの(エピソード記憶)」「身体で覚えるもの」の3つの種類があるということでした。「記憶」と言えば文字や知識などの情報のイメージが強いですが、イベントとして覚えたり身体で覚えることも「記憶」だと思うと勉強方法の幅が広がりますよね。3つの記憶方法をよく理解し取り入れることで、記憶はしやすくなります。
特に、経験として覚えるエピソード記憶は、活用しやすいのではないでしょうか。例えば、「人に教える」「友達と問題を出し合う」というのも、エピソード記憶を作るための立派な手段です。人に教えたり、友達と問題を出し合うことで「あの時、〇〇さんに教えたやつだ!」とか、「あのとき〇〇に問題を出されて、答えられなかったやつだ!」と、経験と紐づけて記憶しやすくなります。是非一度取り入れてみてください。
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