皆さんこんにちは。東大セミナーの堀越です。
今回は「読解力」について、その鍛え方をお伝えします。
目次
2.読解力を使うのは国語だけじゃない!?高まる読解力の重要性
そもそも、よく言われる「読解力」とはどういう力を指すのでしょうか?辞書を引くと、「文章を読んで、その内容を理解する能力」とあります(「コトバンク」)。この定義をもとに、更に「読解力」という言葉のもつ要素を細分化してみましょう。
まず、「文章を読む」とある以上、ただ目で追うだけでは意味がありません。文章中に登場する言葉・語彙の意味を理解して、「正確に」読む必要があります。
また、「内容を理解する」ということは、文章から筆者の伝えたいことを読み取り、自分なりに噛み砕くということ。さらに言い換えると、長大な文章全体から筆者の最も伝えたいことを汲み取り、自分の言葉で表現しなおすということです。いわゆる「要約する」という作業なのですが、これが苦手な方は多いと思います。そこで要約の助けになるのが、文章の構造を理解するということです。この構造の理解も、読解力の一要素となります。
加えて、入試で必要になる読解力には、「時間内に読み終える力」も含まれます。どれだけ精密に文章を読み解けても、試験時間を超えてしまえば意味がありません。
以上、ここでは読解力を「語彙力」「要約力」「解釈力」「速読力」に細分化して、それぞれをどう鍛えていけばいいのかを説明していきます。
それぞれを鍛える方法をお伝えする前に、入試のどういった場面で読解力が必要になるのかを簡単に説明していきます。なお、英語の読解についてはここでは触れませんので、そちらについては下の記事を参考にしてみてください。
『英語長文いっぱい読んで慣れる』は危険!そろそろ長文読解を頑張りたい高校2年生へ
「読解力」と言えば国語!と考える人も多いでしょう。実際、読解力が最も問われるのは国語(現代文)です。言うまでもないことですが、読まなければならない文章量や正確な読解に必要な語彙力は、国語と他科目とでは比較になりません。
しかし、「自分には読解力がないけど、国語以外の科目で点数を稼げば大丈夫!」と考えている場合、それは少し危険かもしれません。特に大学入試では、国語以外の科目でも読解力の重要性がどんどん高まっているのです。
例えば数学。2021年度入試からスタートした大学入学共通テスト(以下、共通テスト)では、陸上競技の100m走を題材に、そのタイムと歩幅(ストライド)、足の回転の速さ(ピッチ)の関係性を、2次関数を使って求める問題が出題されました。これまでのセンター試験で、いきなり「y=…」と式を与えられていたのとは全く異なり、具体的な状況に数学的な考え方を活用する問題になっています。それによって、数学Ⅰ・Aの問題冊子はページ数が約1.5倍に膨らみました。しかし試験時間は60分→70分と10分しか増えていません。数学的な知識や技能だけでなく、問題文を素早く正確に読み解く読解力も試されるようになったと言えるでしょう。
また同じく共通テストの社会では、問題冊子のページ数が地理歴史で20ページ、公民で16ページ増えています。歴史史料や思想家の著書などを引用し、それを読み取って答える形式の問題が増えました。これまで暗記が主であった社会科でも、読解力が試されるようになってきているのです。
読解力が国語以外でも重要だということをお伝えしましたが、いよいよタイトルにある通り、読解力を鍛える方法についてお伝えしていきます。
まずは最も土台になる「語彙力」についてです。英単語はどこの高校でも単語テストの実施など力を入れていますが、国語の語彙についてはなかなか手が回っていないという人も多いのではないでしょうか?理由は様々あると思いますが、必要な語彙の数が膨大であること、英語や古典と異なりある程度は対策なしでも読むことができることなどが一因としてはありそうです。
とはいえ、知らない語彙に遭遇した時、文章の大意がスムーズに理解できなくなる点は英語や古典と同じです。扱える語彙の数に自信がない人は、しっかりと対策しなくてはなりません。また語彙力を鍛えることで、上述したような共通テストの新形式にも対応できるようになります。「ピッチ」「ストライド」という言葉の意味を知っていれば、文章題の意味するところも比較的スムーズに理解できるはずです。
語彙力を鍛えていく上では、辞書を活用しましょう。学校の授業や模擬試験の問題はもちろん、日常生活の読書やニュース番組、インターネットなどでも、知らない言葉が登場したときには辞書で意味を調べるようにすると、自然と語彙力がついてきます。辞書を引くと調べたい言葉の周辺も目に入りますから、同音異義語なども一緒に覚えられるのでおススメです。
「受験まで時間がないから、もっと手早く語彙力をつけたい!」という方は、語彙系の参考書を使うのが一番です。英単語や古文単語を習得するのに、単語帳を使うのと同じですね。特に国語(現代文)の評論文で登場するような文章には日常生活では馴染みのない用語も登場しますから、それに特化した参考書を利用することはとても効果的です。
次に、文章の「要約」についてお伝えします。要約とは、文章を通じて筆者が伝えたいこと、その文章の要点を短く端的にまとめることを言います。抽象的で難解な文章を読むとき、言葉の意味は分かったとしても「何を伝えたい文章なの?」と聞かれると答えに困ってしまうような経験、きっとあると思います。文章で伝えたい内容を端的な言葉で表す要約力、これは現代文の読解や社会科の史料問題といった受験テクニックとしても当然大切ですが、将来社会に出た後でも非常に重要な能力です。
要約力を身につける場合、まず文章中から重要な箇所を見極める必要があります。なら見極めるためには、と言うとこの後説明する「解釈力」が必要になってきますから、ここは一度後回し。先にもう一つ、文章を要約するうえで重要なポイントをお話しします。実は、要約とは「重要な箇所を見つけて終わり」ではないのです。
それは、「自分の言葉で言い換える」ということ。「語彙力」の項でお話ししたように、入試で登場する現代文などは特に専門用語を用いた説明や抽象的な言い回しが多用されますから、文章の意味を理解して、「つまりこういうことだ」と言い換える必要があるのです。
ですから、「要約しなさい」という課題が出されたとき、文中に登場する重要に見えるフレーズを組み合わせただけの「継ぎ接ぎ要約文」では、ほとんど点数を貰えません。要約では、文章中の重要なポイントを見抜く力と、それを自分の言葉で言い換える(パラフレーズ)力が試されるのです。
3つめは文章を適切に「解釈する」ということです。あまり聞き馴染みのない方もいるかもしれませんが、文章を「フィーリング(なんとなく)」ではなく論理的に読解する上では不可欠な技能です。解釈とは、一文中における文節ごとの役割や、文章全体における一文ごと段落ごとの役割を分析することを言います。役割とは例えば、おおらかで他人に寛容な人を「心が広い」ということがありますが、それを強調するために「『海のように』広い心」と比喩表現が用いる場合があります。また、自分の意見の特徴を際立たせるため、「一般的には……と言われている。しかし……」と対比構文を用いている文章も何度も見たことがあるでしょう。このように文章を構成する文や文節にはそれぞれ役割があり、その役割を理解したうえで文章全体の構造を把握するというのが「解釈する」ということになります。
この解釈力を身につけるうえで重要なのが、「接続詞に着目する」ということです。日本語には「しかし」「なぜなら」「さらに」「つまり」など、非常に多様な接続詞があります。これらはその後続く文が文章中のどういう役割を果たしているのかを指し示す重要な道標なのです。これらの接続詞を「ディスコースマーカー」と呼ぶこともあります。例えば、「しかし」という接続詞が登場したとき、それはそれまでの内容に反する内容が登場することを意味します。
普段から何気なく使っている接続詞は改めて意味を説明されると「それはそうだ」と拍子抜けに感じるかもしれません。しかしこれを意識的に着目して意味を考えることが、文章を論理的に読み解くうえで非常に重要になるのです。
最後にお伝えするのが、「速読力」です。入試問題を解くうえでは、「時間内に解き切る」ことが最重要です。文章を読むのに時間を掛けすぎれば解答に充てられる時間が少なくなり、結果的に思うような点数は取れません。しかし速く読めたとしても、内容が理解できていなければ意味がありません。むしろもう一度読み直したりすることで、余計時間がかかる可能性もあります。100文字の文章も5回読み返せば500文字分です。これでは結果的に「じっくり1回読む方が早い」なんてことにもなりかねません。
効果的な速読のために重要なのは、「難解な語彙をスムーズに理解し」「構文解釈で文章の流れを読み解き」「文章の要点を自分なりの言葉で理解する」ことです。
……そうです、これまでお伝えしてきた3つの力、これらの実力を身につけることで、文章を読むスピードは格段に上がっていきます。速読用の細々としたテクニックよりも、上述の力の方がはるかに本質的な読解力に繋がりますので、ぜひ頑張って進めてみましょう。
いかがでしたでしょうか?後半は現代文読解に焦点を合わせて話をしてきましたが、最初に述べた通り、読解力が必要になるのは国語だけではありません。その他の入試科目や、ひいては社会に出た後の人生すべてで必要とされる能力です。受験勉強を通じて身につけることができれば、それは一生の財産になるでしょう。
最後に、読解力は1日や1週間、1カ月で身につくものではありません。効果的な読解法を学び、それを実践していく中で自然と身についていきます。
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