中国の春秋時代に活躍した思想家孔子に、弟子の子貢が簡単に一言で一生涯それを行う価値のあるものがありましょうか、と訊いたところ孔子は、それは「恕」、人の身になることだと答えた。また直ぐ後に、人の身になってみたら、自分の欲しないことを、人に加えることなどできるものではないとしている。
この一節は「論語」のなかでも特に好きな言葉だ。よく相手に対する「思いやり」が大切だ、といわれるがこれも「恕」の精神があってのことだろう。人の身になって、初めて「思いやり」が生まれるといういうものだ。コミニュケーションなどの対人関係能力などについても同じことが言える。
「寛容」ということについてもまた同じではなかろうか。自分とは違う、利害が対立する相手を認めることはとても大切なことだが、「恕」の精神が根底にないと難しいことだ。
このように考えてくると「怒る」ということが如何にも自分勝手な生理的現象でしかないことに気づかされる。
今から2,500年も前に孔子は人間関係において最も大切なものを端的に教えてくれたように思う。これは家族・趣味の会・社交クラブなどの共同体的組織、企業・軍隊などの機能体的組織においても同様である。先日、日本は世界有数の自殺率の国との情報に接した。自殺者は年間33,000人を超える。「恕」の精神が益々重要になってくる。
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