古来より人間が行ってきた行為(行動)に科学の光が当たりその意義や意味が明らかになることがある。その1つに「祈り」や「瞑想」がある。以前に巻頭言において「祈り」について若干触れたが脳科学の視点からこれらについての知見があるようだ。ペンシルベニア大のアンドリュー・ニューバーグのグループの研究に、「仏教徒が瞑想や祈りの行為によって深い宗教的境地に達する前後で、どのように脳の働きが違うのか」を調べた実験があるようなのだ。それは「祈り」や「瞑想」により「自分」と「他者」の区別を認識する「方向定位連合野」という脳の部分の活動が抑えられ、その結果「自己と他者の境界がなくなるような感覚」が生ずることを報告している。もっと具体的には「自分が孤立したものではなく、万物と分かちがたく結ばれている直観」「時間を超越し、無限がひらけてくるような感覚」という表現でその感覚の説明を試みているとのことである(中野信子著「脳科学からみた祈り」)。
一方、経営学においても2020年代のリーダーにとって「セルフ・アウェアネス」(自己に意識を傾けること)が必須科目になるとの考え方が世界的に有力になりつつある。従来の「カリスマ的なリーダーシップ」に代わって自己の強み、弱み、特徴を見極めたうえで自分らしさを発揮する「オーセンティック・リーダーシップ」が重視されてきている。このリーダーシップは誠実さ倫理観といった内的な基準に結びついているとされる(立教大学教授中原淳著「ハーバード・ビジネス・レビュー」)。
この2つの話題に共通することは、これからの時代に対処するには「自己を知こと」が重要だということだ。「夢」や「志」と言ったところで「自分とは何か」「自分はどんな人間になりたいのか」「どんな人生を歩みたいのか」についての自問自答から始まるのである。
時代は私たちに私たち一人ひとりの「being」を問うている。
※1990年代の初頭より「ホワイト・ボード」(保護者通信)の巻頭言を書いてきました。しかし時代の進展は早く、ここらで若い人に交代するのもよいと考え、塩谷浩一専務取締役にお願いすることになりました。彼は当社の理念・哲学を深く理解し今日まで実績を積み重ねてきました。IT関連にも強く読者の皆様に有益な情報を提供できると確信している次第です。永らくご愛読いただきありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。
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