皆さんこんにちは。東大セミナーの篠原です。
今月のおススメ本は「寝る脳は風邪をひかない 」です。
著者:池谷 裕二
出版社:扶桑社
価格(税込):1760円
本書は脳研究者の池谷裕二さんが「週間エコノミスト」で14年連載していたエッセイをまとめたものです。脳科学に関する論文や研究がわかりやすく紹介されています。そのテーマは多岐にわたり、AI、DNA、人の心理など、様々な事がらに及びます。
勉強に関わりのありそうな内容を一つ挙げると、「知識は使ってみるほうがはるかに脳にとって重要」と紹介されています。テストを受けるときは単に問題に答えるだけではなく、解答を導くためのヒントも同時に脳内で作り上げているのだそうです。
単語テストを受けているときを想像してみてください。答えとなる単語を思い出すために、その単語だけではなく、意味や発音が似ている単語も連想するなど、さまざまな工夫を行いますよね。そのように、テストのときに連想した単語グループが記憶をより精緻化するのだそうです。
その他に興味深いものとして「年を取っても記憶力は衰えない」ことも紹介されていました。解剖学的知見によると、脳の神経細胞の数は3歳以降ほぼ一定で、100歳まで衰えることがないそうです。ですので、年を重ねても脳の機能は劣化しないはずなのです。著者によると、「老化すれば記憶が衰える」と本人が思い込んでいることが、記憶力が衰弱する一番の原因であるそうです。
思い込みによって記憶力が衰えることを証明する実験も紹介されていました。米タフツ大学のアヤナ・トーマス博士が行った実験です。18歳から22歳の若者と60歳から74歳の年配者を64人集め、受験者の記憶力を測るテストを行いました。テストの前に「この記憶試験では、通常、高齢者のほうが成績は悪い」と説明したグループでは、若者よりも高齢者の点数が低くなりました。対して、試験前に「これはただの心理学の試験である」とだけ説明したグループでは、若者・高齢者ともに同じ結果となりました。思い込みの影響力を考えさせられる実験ですね。また、思い込みは記憶力だけではなく、人間の様々な能力に作用しているかもしれない、と考えさせられます。
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